養育費の支払いがつらく、養育費の減額について考えたことはありませんか?
元妻や自分の再婚を理由に養育費を減額できる場合があります。
もっとも、一度取り決めた養育費を減額するのは難しい場合があります。減額交渉する前に、減額交渉のポイントについて知っておきましょう。
この記事では、
- 養育費の意味
- 養育費の減額・減額の方法
- 養育費の減額の交渉のポイント
について、弁護士が詳しく解説します。
養育費の支払いがつらい方、養育費の減額を検討されている方、ぜひ参考にしてください。
養育費とは生活が苦しいからといって支払わなくてもよいというものではない
ここで、まず養育費について説明します。
詳しくは子どもの養育費をご覧ください。
再婚を機に養育費の支払い義務がなくなるわけではない
あなたが再婚をし、扶養すべき配偶者や子ができた場合、配偶者や子との生活のために生活費などの支出が増えることとなります。
もっとも、これまで支払っていた養育費を支払わなくてもよくなるということはありません。
一方、あなたの元妻(夫)が再婚をし、子が再婚相手の養子となった場合であっても、必ずしもあなたの養育費の支払い義務がなくなるというわけではありません(支払い義務がなくなる場合もあります)。
一度取り決めた養育費を減額できる場合がある
一度取り決めた養育費についても、取り決めた時点では予測できなかった事情の変化により、養育費の減額ができる場合があります。
「再婚」についても、養育費を取り決めた段階では予測できなかった事情の変化があったとして、養育費の減額が認められる場合があるのです。
ここで、養育費を受け取っている側の元妻(夫)と養育費を支払う側であるあなたがそれぞれ再婚したケースについて、養育費の減額が認められるのかどうか、ケース別に解説いたします。
(1)養育費を受け取っている側の元妻(夫)が再婚した場合
まず、養育費を受け取っている側が再婚したケースについて解説します。
(1-1)再婚相手が子どもと養子縁組したとき|減額の可能性は高くなる
子どもを連れて親が再婚しても、法律上当然には、再婚相手と連れ子の間に親子関係は発生しません。
再婚相手と連れ子が養子縁組をすることで、初めて両者間に法律上の親子関係が生じます(民法第809条)。
養子縁組をすると、法律上、養親と実親は同じ扶養義務者となりますが、通常再婚により子どもは養親と共同生活をすることになりますので、養親が一次的な扶養義務者となり、実親が二次的な扶養義務者になると考えられています。
つまり、元配偶者(実親)の扶養義務は再婚相手(実親)の扶養義務に劣後することになりますので、元配偶者が養育費の減額を請求すれば、認められる可能性は高くなると考えられます。
(1-2)再婚相手が子どもと養子縁組しないとき|減額の可能性は一定程度ある
再婚相手が連れ子と養子縁組しない場合には、両者間に法律上の親子関係は発生しませんので、法律上の扶養義務も生じませんし、どちらかが亡くなってもお互いに相続することもありません。
したがって、再婚したとしても、元配偶者が子どもに対して第一次的な扶養義務を負うことは変わりません。
しかし、再婚相手が子どもの養育費など家族の生活費を負担しているなどという事情がある場合には、事情の変化があるとして、養育費の減額請求が認められる可能性が一定程度あるといえます。
(2)養育費を支払っている側であるあなたが再婚した場合
次に、養育費を支払っている側が再婚した場合のケースについて解説します。
(2-1)再婚相手に子どもがいない|減額の可能性は一定程度ある
再婚すると、法律上、夫婦間には同居して相互に協力する義務(民法第752条)および生活費を分担する義務(第760条)が生じます。
たとえば、元配偶者の収入も十分ではなく、再婚相手が専業主婦(主夫)やパートタイムなどで収入が低い場合には、生活費の負担が大きくなりますので、再婚家庭の家計などの事情を考慮すると、取り決めた養育費が妥当でなくなる(高すぎる)と判断される可能性が一定程度あるといえます。
(2-2)再婚相手との間に子どもが生まれた|減額の可能性が高い
再婚相手との間に子供が生まれた場合、法律上の扶養義務を負う子どもが増えることになります。
前婚での子どもに対する扶養義務と、再婚後の子どもに対する扶養義務は同等と考えられており、どちらかが劣後するものではありません。
前婚の子どもに対する養育費の負担により、再婚後の子どもに対する扶養を果たすことができないという事態は避けるべきです。
そこで、事情の変化があったとして、養育費減額請求をすれば、それが認められる可能性が高くなります。
ただし、裁判所は、各家庭の収入・支出状況などのさまざまな事情を考慮したうえで最終的に判断しますので、養育費の減額が必ず認められるものではありません。
(2-3)再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組する|減額の可能性が高い
再婚後、再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、両者間に法律上の親子関係が生じ、連れ子に対する扶養義務も発生します。
養子縁組をすると、法律上、養親と実親は同じ扶養義務者となりますが、通常再婚により子どもは養親と共同生活をすることになりますので、養親が一次的な扶養義務者となり、実親が二次的な扶養義務者になると考えられています。
したがって、同等の扶養義務を負う子どもが増えますので、一方の子どもの養育費の負担により、他方の子どもに対する扶養を果たすことができないという事態は避けるべきです。
このような場合には、養育費減額請求をすれば、事情の変化があったとして、減額が認められる可能性は高くなります。
ただし、裁判所は、各家庭の収入・支出状況などの様々な事情を考慮したうえで最終的に判断しますので、養育費の減額が必ず認められるものではありません。
(2-4)再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組しない|減額の可能性は一定程度ある
再婚後、再婚相手の連れ子と養子縁組をしない場合には、両者間に法律上の親子関係は生じませんし、法律上の扶養義務も発生しません。
したがって、再婚したからといって扶養義務を負う子どもが増えるわけではありませんので、事情の変化があったとして、養育費の減額請求をしても認められる可能性は高くありません。
しかし、再婚すると、法律上、夫婦間には同居して相互に協力する義務(民法第752条)および生活費を分担する義務(第760条)が生じます。
そこで、自分の収入も高くはなく、再婚相手が無職またはパートタイムなどで収入が無いまたは低い場合には、生活費を負担が大きくなりますので、再婚家庭の家計などの事情を考慮すると、取り決めた養育費が妥当でなくなる(高すぎる)と判断される可能性が一定程度あるといえます。
養育費を減額するための手続
では、養育費を減額するためにはどのような手続をとる必要があるのでしょうか。
養育費の減額は、養育費を支払う側が勝手に決めて行うことはできません。
養育費の減額は、原則、養育費を支払う側と受け取る側の話合いで決める必要があります。
話合いで決めることが難しい場合には、家庭裁判所に対して調停や審判を申し立てることになります。
(1)話合い
養育費の減額のためには、まずは養育費を支払う側と受け取る側で話し合って、減額に同意してもらうことが基本となります。
そこで、まずは養育費を受け取る側の元妻(夫)に対して、養育費の減額を希望すること、その理由などについて真摯に説明して、同意を得られるよう話し合うようにしましょう。
(2)家庭裁判所での調停
当事者同士で話し合っても、減額について折り合いがつかない場合や話合いが難しい場合には、養育費の減額を求める調停を申し立てて、調停委員を交えて話合いを行うことになります。
調停では、調停委員が双方の主張を聞き、養育費の減額が妥当か、それについての合意が可能かどうかについて、話合いを仲介します。
調停はあくまで話合いの手続となりますので、当事者が納得しない限りは、勝手に話を決められてしまうということはありません。
また、元妻(夫)と顔を合わせたくないという場合でも、基本的に当事者が顔を合わせることはありません。個別に調停委員と話す形で話合いをすすめていきます。
調停での話合いの結果、減額に合意ができた場合には、調停は成立し、養育費は成立した調停の内容の通りに変更されます。
(3)調停でも話合いがまとまらなかった場合には審判
調停で話し合っても合意できない場合には、調停は不成立となりますが、引き続き審判手続に移行します。
審判手続では、裁判所が、「養育費の合意がなされた当時に予測できなかった事情の変更があったかどうか」という観点から様々な事情を考慮して、事情の変化があり、養育費の減額が妥当だと認められる場合には、減額後の養育費について判断し、審判を下します。
元妻(夫)が再婚!養育費の減額交渉のポイント
養育費を受け取る側の元妻(夫)が再婚したことにより養育費の減額の主張する場合には、再婚相手とあなたの経済的状況を比較して、あなたがこれまで通りの養育費を払い続けるのはおかしいということをアピールする必要があります。
たとえば、次の点についてアピールすることが重要となります。
・元妻(夫)と再婚相手が子を養うだけの十分な経済的余裕をもつこと
・養育費を支払う側であるあなたに経済的余裕がないこと
自分が再婚!養育費の減額交渉のポイント
一方、養育費を支払う側であるあなたが再婚したことにより養育費の減額を主張する場合には、これからあなたが再婚相手や子を扶養しなければならず、あなたが支出する費用が増え、これまで通りの養育費を支払い続けることが難しいことをアピールする必要があります。
例えば、次の点についてアピールすることが重要となります。
・再婚相手には経済力がなく、再婚相手や子を扶養するのはあなたであること
・養育費を受け取る側の元妻(夫)には、養育費を減額しても問題ない経済的に余裕があること
【まとめ】元妻や自分の再婚は、養育費を減額しうる事情になり得る
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 「養育費」とは、親が離婚した場合、子どもを直接育てる親(監護親)は、子どもと離れて暮らす親(非監護親)に対して請求できる子どもを育てていくための養育に要する費用のことをいいます。
- 養育費は、非監護親が「生活が苦しいから支払えない」という理由で支払義務を免れるものではなく、生活水準を落としてでも支払う必要があるお金となります。
- 再婚を機に養育費の支払い義務が当然なくなるわけではありませんが、減額できる場合があります。
- ケース別の減額の可能性
ケース | 減額の可能性 | |
---|---|---|
養育費を受け取っている側の元妻(夫)が再婚した場合 | 再婚相手が子どもと養子縁組したとき | 減額の可能性は高い |
再婚相手が子どもと養子縁組しないとき | 減額の可能性は一定程度ある | |
養育費を支払っている側であるあなたが再婚した場合 | 再婚相手に子どもがいない | 減額の可能性は一定程度ある |
再婚相手との間に子どもが生まれた | 減額の可能性は高い | |
再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組する | 減額の可能性は高い | |
再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組しない | 減額の可能性は一定程度ある |
- 養育費の減額は、原則、養育費を支払う側と受け取る側の話合いで決める必要があります。話合いで決めることが難しい場合には、家庭裁判所に対して調停や審判を申し立てることになります。
- 養育費を受け取る側の元妻(夫)が再婚した場合の養育費の減額交渉のポイントは、元妻(夫)と再婚相手が子を養うだけの十分な経済的余裕を持つこと、養育費を支払う側であるあなたに経済的余裕がないこと、です。
- 自分が再婚した場合の養育費の減額交渉のポイントは、再婚相手には経済力がなく、再婚相手や子を扶養するのはあなたであること、養育費を受け取る側の元妻(夫)には、養育費を減額しても問題ない経済的に余裕があること、です。
詳しくは、離婚に関するQ&Aをご覧ください。
養育費についてお困りの方は、離婚問題を取り扱う弁護士に相談することをおすすめいたします。
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。