「借金の返済に追われて苦しい。自己破産をすれば借金がなくなると聞いたけれど、自己破産は誰でもできるんだろうか……」
自己破産するには一定の条件を満たすことが必要となります。
とはいえ、〇歳だから自己破産できない、というような年齢制限はありません。
また、借金が〇円以上(〇円未満)だから自己破産できないという一律の金額制限もありません(※ただし、後述するように「支払い不能」であることなどの条件はあります)。
実際に自己破産を申立てた方に関する調査を見ても、年代は20~70代まで、借金額も100万円未満から数千万円以上とかなりの幅があります。
今回の記事では、
- 自己破産の条件
- 実際に自己破産を申立てた方の借金の額・年齢・収入・借金の原因
- 免責が認められた割合
自己破産の要件とは?
自己破産って誰でもできるんですか?借金がいくら以上ないといけないとか、何か条件はありますか?
自己破産の申立ては誰でもできます。借金などの負債額による条件もありません。
ただし、裁判所が「破産手続開始決定」を出して手続を進めるためには、債務者が「支払不能」の状態にある必要があります。
支払不能とはどんな状態ですか?
債務者が借金を一般的および継続的に返済することができない状態のことです。
具体的には、今ある全ての借金を3年以内(36ヶ月)で返済できるか、というのがひとつの目安になります。
3年以内に返済できるかどうかは、どうやって計算したら良いのですか?
毎月の収入から支出を差し引いて、余ったお金×36ヶ月分で借金が返済できるかどうか考えます。
借金の返済に追われているという方は、一度、収入から月々の支出を計算して、その余剰からどの程度で借金を返済できるのか検討してみることをお勧めします。
例えば、次のような収支で考えてみましょう。
収入 | 支出 | ||
---|---|---|---|
費目 | 金額 | 費目 | 金額 |
給料 | 18万円 | 家賃 | 5万5000円 |
その他 | 食費 | 3万5000円 | |
水道 | 4000円 | ||
電気 | 3000円 | ||
ガス | 3500円 | ||
NHK | 1310円 | ||
医療費 | 3000円 | ||
保険料 | 1800円 | ||
携帯電話(Wi-Fi) | 8000円 | ||
交際費 | 1万円 | ||
被服費 | 1万円 | ||
日用品 | 3000円 | ||
合計 | 18万円 | 合計 | 13万7610円 |
余剰 | 4万2390円 |
このケースでは、月の余剰金が4万2390円ですので、余剰金全てを借金返済に回すことを前提にすると、3年間で返済できる金額は次のとおりです。
4万2390円×36ヶ月=152万6040円
このような収支の方の場合、200万円以内の借金であれば、交際費などを節約することで、自己破産せずに自力で返済できるかもしれません。
他方、少なくとも300万円を超えるような借金があれば、節約でカバーできる範囲は超えており、とても36ヶ月で返済することはできません。
ですから、そのような場合には、基本的には「支払不能」の状態にあると言えるでしょう。
日弁連の調査によると、2016年6月1日から同年11月30日までの間に自己破産を申立てた方(調査件数1238件)の借金額の割合は次のとおりでした。
これによると、自己破産を申し立てた方のうち、約22%は、借金の総額が200万円未満でした。
また、約46%は借金の総額が400万円未満で、約52%は借金の総額が500万円未満でした。 なお、同じ調査によると、自己破産を申立てた方の月々の収入の内訳は次のとおりです。
これによると、自己破産を申し立てた方のうち、約35%は月収が10万円未満で、約56%は月収15万円未満です。 支払不能の状態にあるかどうかは、収入や資産、借金額などが総合的に考慮されて判断されますので、一概にいくらということはできません。
今、まさに借金の返済が苦しいという方は、借金額がいくらかと言うことだけではなく、節約した場合の家計の余剰を計算し、支払不能の状態にあるのか検討されることをお勧めします。
自己破産を申立てた方の性別について
それでは次に、自己破産を申立てた方の性別の内訳を見ていきましょう。
日弁連の同じ調査によると、自己破産を申立てた方の性別は、次の表のとおりです。
男性の割合が若干多いですが、性別による大きな差はありません。
自己破産を申立てた方の年齢について
それでは次に、自己破産を申立てた方の年齢を見ていきましょう。
日弁連の同じ調査によると、自己破産を申立てた方の年齢の内訳は、次の表のとおりです。
(※20代未満の方は調査の中ではいませんでした)
調査では、自己破産を申立てた方のうち、半数以上の方が40代以下でした。
働き盛りの30~50代までの方で7割近くを占めていますが、幅広い年代の方が自己破産を申立てているのがお分かりになるかと思います。
借入から自己破産の申立てまでの期間について
次に、借入から自己破産の申立てまでの期間についてご紹介します。
同じ調査によると、借入から自己破産まで5年以上という方が8割近くを占めており、圧倒的に多いですが、それ以下の年数の方も全体の約18%でした。アスベスト(石綿)健康被害の給付金・賠償金請求
実は、パチンコにはまって借金を重ねました。
借金の原因がギャンブルだと、借金がなくならないと聞いたことがありますが、自己破産をする方は、皆さんどのような理由で借金をしているのでしょうか。
借金の原因は様々です。同じ調査によれば、次のような借金が原因で破産申立てに至っています。
確かにギャンブルでの借金は「免責不許可事由」にはなりますが、後でご説明しますが、免責不許可事由があっても、必ずしも免責が認められないというわけではありません。
借金の原因 | ||
---|---|---|
1 | 生活苦・低所得 | 61.47% |
2 | 病気・医療費 | 22.70% |
3 | 事業資金 | 17.37% |
4 | 失業・転職 | 16.32% |
5 | 借金の返済(保証以外) | 15.11% |
6 | 保証債務 | 14.54% |
7 | 生活用品の購入 | 12.28% |
8 | 住宅購入 | 10.26% |
9 | 給料の減少 | 9.61% |
10 | 浪費・遊興費 | 9.29% |
11 | 教育資金 | 7.75% |
12 | クレジットカードによる購入 | 6.46% |
13 | ギャンブル | 4.93% |
- ※複数回答による集計
調査によると、借金の原因で一番多いのは「生活苦・低所得」ですが、「浪費・遊興費」や「ギャンブル」を原因とする借金も少なくありません。
免責不許可事由がある場合の自己破産について
免責不許可事由とは、自己破産において、それがない場合には免責(借金の返済義務を免除すること)を認めると法律上明記されている事由です。
すなわち、免責不許可事由があると、自己破産したとしても、借金の支払い義務が残ってしまう可能性があるということです。
浪費やギャンブルによる借金は、免責不許可事由の一つです。
ですが、免責不許可事由があるからと言って、必ずしも免責不許可になるわけではありません。
免責不許可事由があっても、裁判官が裁量で免責を認めても良いと判断すれば、裁判官の裁量により免責が許可されます。これを、「裁量免責」といいます。
これまでご説明している日弁連の調査で実際に免責許可・不許可になった割合は、次のとおりです。
自己破産を申立てた方のうち、免責不許可になった方はわずか0.57%に過ぎません。
(※取下げをした2.34%の中に、免責不許可になりそうだとの理由で取下げた方がいる可能性はあります)
免責許可になった方は96%を超えていますので、大多数の方は免責が許可されているのがお分かりかと思います。
実際に自己破産を申立てる方の中で、免責不許可事由が全くないという方は、それほど多くはありません。
ギャンブル等で作ってしまった借金があまりにも大きい場合や、意図的な財産隠しや裁判所に嘘をついた場合、7年以内に免責を受けたことがある場合など悪質なケースであれば免責が認められないこともありますが、そうでなければ裁量で免責が認められうるのです。
免責不許可事由がありそうだからと自己破産をためらっている方でも、まずは見込みなど弁護士に相談することをお勧めします。
自己破産というと、マイナスなイメージから抵抗感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、自己破産は法が認める経済的な立ち直りのチャンスです。
今まさに借金の返済が苦しいという方は、自己破産を含めた債務整理につき、弁護士に相談されることをお勧めします。
【まとめ】実に幅広い層の方が自己破産をしている
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 裁判所が破産手続開始決定を出すには、申立人が「支払不能」な状態にある必要がある。
- 支払不能とは、基本的には今ある債務を3年以内(36ヶ月)に返済できるかどうかがひとつの目安となる。
- 日弁連の調査によると、実際に自己破産を申立てた方の借金額は100万円未満から数千万円以上と幅広いが、半数以上が500万円以下である。
- 自己破産を申立てた方の性別は男性の方が多いが、性別による差はそれほど大きくない。
- 自己破産を申立てた方の年代は、30~50代の方で約7割弱を占めているが、20代の方も約7%、60代以上の方も約23%いる。
- 借金の原因は、生活苦・低所得が一番多い理由だが、浪費・遊興費やギャンブルなどの理由も一定の割合を占める。
- 免責が認められる割合は、2017年度の調査では96.77%。免責不許可事由があっても、悪質なケースでなければ、裁判所の裁量で免責が認められることもある。
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